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う蝕予防のためのフッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法(2023年版)

う蝕予防のためのフッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法(2023年版)
日本口腔衛生学会・日本小児歯科学会・日本歯科保存学会・日本老年歯科医学会

う蝕予防のためのフッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法が、日本口腔衛生学会・日本小児歯科学会・日本歯科保存学会・日本老年歯科医学会の4学会合同で取りまとめ、報告されました。

考察を加えてお話しします。

A:う蝕予防のためのフッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法(2023年版)本編
B:推奨される利用方法を踏まえ、6歳から高齢者の方に当院でお伝えしていること

A:う蝕予防のためのフッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法(2023年版)本編

あらゆる医薬品の適応や保健医療介入と同様に、フッ化物配合歯磨剤の使用については、メリットとデメリットの両方が考慮されるべきである。双方を考慮した上で作成された現在の国際的な推奨としては、国際歯科連盟(FDI)や世界保健機関(WHO)が作成したフッ化物配合歯磨剤の推奨が存在する。
これらを参考としてさらに日本の状況を考慮し、今回の推奨は作成された。
歯磨剤のフッ化物濃度は高いほどう蝕予防効果が高いと考えられるが、飲み込みによるリスクを考え、年齢別の推奨をおこなっている。

歯の形成期である乳幼児・小児に対しては、歯のフッ素症のリスクと 、う蝕予防のメリットのバランスを考慮する必要があり、メリットがリスクを上回ると考えられる利用法が推奨されており、本推奨もこれを踏襲した。

また、歯磨剤を乳幼児が誤って大量に食べたり飲み込んだりしないよう、使用方法、保管場所に気をつける。歯磨剤を製造する企業では、乳幼児向け歯磨剤についてはチューブを1 本飲み込んでも問題ない総量のチューブの製品の製造・販売が基本的にされているが、大量摂取には注意する。

また多くの市販される歯磨剤で、配合されるフッ化物濃度が記載されておらず、今回の推奨を守る上でもこのことは大きな問題である。
歯磨剤の国際規格(ISO 11609)では、容器にフッ化物の種類と濃度を表示することが義務づけられており、こうした国際規格に合わせ日本でも歯磨剤のフッ化物濃度の明記が求められる。

さらに日本では味などの点で子ども向けの 1450 ppmF の製品が少ないので、販売が望まれる。 日本では現在販売されていないが、5000 ppmF の高濃度フッ化物配合歯磨剤の有用性が知られており、ハイリスク者への利用が推奨されるようになっている。
特に、初期活動性根面う蝕は、5000 ppmF の歯磨剤の使用によって進行が停止する明らかなエビデンスが示されており、歯根表面が口腔に 露出しやすい高齢者で、根面う蝕が多発するようなケースでは 5000 ppmFの歯磨剤が有用である。

そのため日本でも診療ガイドラインで根面う蝕への対策として推奨されるようになった 。先進諸国の 多くは 5000 ppmF の歯磨剤を歯科医師が処方しているが、処方箋なしで購入できる国も増えている。
日本においても 5000 ppmF の歯磨剤の販売の認可が求められる。
高齢者においても、根面う蝕を含むう蝕予防の観点からフッ化物配合歯磨剤の利用が推奨されている。

高濃度で酸性のフッ化物歯面塗布にはチタンインプラントを腐食させる可能性があるが、低濃度で中性のフッ化物配合歯磨剤ではその可能性はないと考えられる。

また、フッ化物を配合しない製品に使われることがあるクロルヘキシジンには、う蝕予防効果がないことが報告されており、使用上の 注意も存在する 。
そのため天然歯へのう蝕予防効果を考え、インプラント患者にもフッ化物配合歯 磨剤の利用が推奨されている。
国際的にも全ての人へのフッ化物配合歯磨剤の利用が推奨されており、これらを本推奨も踏襲した。

B:推奨される利用方法を踏まえ、6歳から高齢者の方に当院でお伝えしていること

以下当院で6歳から~成人・高齢者の方に追加で伝えていることになります。
①歯磨剤の中には発泡剤を含んでいます。発泡剤含有の目的として口腔内にフッ素など歯磨剤の成分を分散させて、その成分の機能を発揮しやすくし、さらに歯磨き中の液ダレを防ぐ目的で配合されています。
しかし、歯磨剤を1.5~2センチ使用して磨くと口腔内が泡だらけになってしまい、結果的に磨く時間が短くなってしまい。フッ素による、う蝕予防のメリットより、ブラッシング時間が短くなることによるデメリットが上回ってしまっては元も子もありません。

泡だらけになって磨きにくいと思う場合は
・低発泡の歯磨剤を選択する
 ・まずは、少々の歯磨剤で丁寧に歯磨きを行い(目的はプラーク除去)、そのあとフッ素効果を得る目的で、再度指定量の歯磨剤を歯ブラシに取り、再度、短時間歯磨きを行う
(目的はフッ素によるう蝕予防)

②推奨では、「歯磨きの後は歯磨剤を軽く吐き出す。うがいをする場合は少量の水で一回のみ」となっています。
“少量”の記載では、量に個人差があります。ペットボトルのキャップ1杯分ですとお伝えしています。
 「そんなに少ないの!!」と驚かれる患者さんもいますが、推奨でも「歯磨きの後は歯磨剤を軽く吐き出す。うがいをする場合は少量の水で一回のみ」となっています。
 本音を言えば、軽く吐き出すだけで、うがいはしないでいただきたいのです。
 海外のドラマや映画で歯磨きのシーンで、俳優さんが歯磨き後に、“ペッ”と歯磨き後につばと歯磨剤の泡を洗面台に吐いた後はタオルで、グイっと口元を拭いてそれで終わり。といった芯が府鬱に流れています。

 日本人は、きれい好きなことが逆にあだになり、歯磨き後は“しっかりうがい“文化が根付いてしまっているので、うがい無しはなかなか受け入れがたく、仕方なく“うがいをする場合は少量の水で一回のみ”が入っているんです・・・・

 うがいをしたい方のパターンとして
  ・歯磨き粉の味が残るのが嫌という方には
    歯磨き粉のフレーバーをなるべくマイルドなものを選択するようにお伝えしています。
  ・うがいで汚れを落としてるんじゃないの?という方には
    そもそも、食べかすと・プラークは異なり。食べかすは強いうがいでとれるかもしれが、プラークはねっとりと歯面に付着しているので、うがいでは取れないことお伝えしています。
プラークは歯ブラシや、フロス、歯間ブラシで機械的に落とす。そのうえで、つばと歯磨剤の泡と一緒に吐き出す。それで終わらせれば、口腔内にフッ素が残ってくれます。

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