森岡歯科ブログ BLOG

女性ホルモンと歯周病の関係 第三弾

こんにちは。
森岡歯科医院、歯周病専門医の森岡優美です。
今回は「女性ホルモンと歯周病の関係」についての第三弾として、更年期における歯周病の影響についてお話します。
これまで第一弾、第二弾では女性ホルモンの増加に伴う歯周病への影響をお話してきました。
今回は、更年期においてホルモンが減少していくことによる歯周病やお口全体への影響についてお話したいと思います。
 
女性は閉経とともに女性ホルモンが減少します。女性ホルモンの減少に伴う影響で代表的なものは骨粗しょう症です。骨というのは、絶えずリモデリングと言って骨を吸収(溶かす)と添加(つくる)を繰り返してバランスをとっています。エストロゲンには骨をつくる骨芽細胞を活性化し、骨を溶かす破骨細胞を抑制する働きがあります。そのためエストロゲンが減少すると、骨のリモデリングのバランスが崩れ、骨を溶かす細胞が抑制されず骨がやせていってしまいます。骨粗しょう症が女性に圧倒的に多いのは、このことが原因です。
歯槽骨においても同様です。歯周病は様々な要因がありますが、簡単に言うと「歯周病原細菌によって歯槽骨が溶ける病気」です。歯周病のある人が更年期になり女性ホルモンが減少するとさらに歯槽骨が溶けやすくなってしまうのです。
また、女性ホルモン減少による免疫応答の変化で歯肉に炎症が起こり、歯周病が進行しやすくなります。
その他にも、エストロゲン減少の影響でコラーゲン形成が減少し、肌のはりが無くなるだけでなく歯茎も薄くなっていきます。また、体がほてると感じるようにお口にも灼熱感や口腔乾燥の症状を訴える方も多くいらっしゃいます。女性ホルモン減少に伴うお口の中の影響についてまとめると下記のようになります。

歯周病の治療において一番重要なのはプラークコントロールです。歯磨きがきちんと出来ていないと、いくら通院治療しても歯周病はほとんど良くなりません。
更年期においては歯周病が進行しやすい環境にあり、プラークコントロールの徹底が最も重要です。
もともと歯茎が薄いタイプの方や更年期により歯茎が薄くなっている方は、過度なブラッシング圧や硬い毛の歯ブラシを使っていると歯茎がどんどん下がっていってしまうため注意が必要です。
また、口腔乾燥がある方はアルコールを含んだマウスウォッシュや発泡剤を含む歯磨き粉を使用すると、口腔乾燥の症状がより強く出てしまいます。
そのほかにも注意すべき点は患者様ごとに異なります。
当院では患者様に合った歯ブラシの器具や製品をお伝えし、正しいブラッシング方法を指導することで、プラークコントロールの徹底に努めています。

「今までは症状が全くなかったのに、最近になって歯茎が腫れぼったい、出血する」など、変化が起こった時に考えられる原因の一つに女性ホルモンの影響が考えられます。女性は、女性ホルモンの変動により生涯を通じて男性よりも歯周病のリスクが高いのです。女性のライフステージに合わせた歯周病の管理が必要になることがあります。
口腔内の変化を感じた際は、担当衛生士に相談しましょう。

今回、第一弾から第三弾まで、女性ホルモンによる歯周病への影響についてお話してきました。
しかし、基本的には歯周病はゆっくり進行し、多くの場合症状はほとんどありません。
ゆっくり進行するため変化に気づきにくく、気が付いた時には手遅れになってしまうことも少なくありません。
当院では男女問わず歯周病のメンテナンスでは、歯磨きの状態のチェックや、磨けていない部位に対するブラッシング指導、溜まってしまった歯垢や歯石の除去を行い、お口の中の環境を向上させます。メンテナンスを数か月おきに行うことで、良い状態をキープすることができますので継続的に受診することが大切です。

参考資料
・第65回春期日本歯周病学会学術大会 歯科衛生士シンポジウム
ウーマンオーラルヘルス ~女性ホルモンと歯周病~
・Reinhardt RA et al.J Periodontol 1999;70:823-828
・Pepelassi E,Nicopoulou-Karayianni K,Oral Dis 2012;18:353-359
・Pepelassi E,Nicopoulou-Karayianni K,Oral Dis 2013;84:352-359
・Gondim V et al.J Periodontol 2013;84:352-359

タップすると電話ができます 03-3935-7295 森岡歯科ブログ